幻想小曲集作品12 (シューマン)
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幻想小曲集(げんそうしょうきょくしゅう、Fantasiestücke)作品12は、ロベルト・シューマンが1837年に作曲した、8曲からなるピアノ曲集。タイトルの通り、一つ一つの曲は幻想的な情緒に満ちており、それぞれに文学的な標題が付けられている[1]。
なお、シューマンの作品で「幻想小曲集」と銘打たれているものは他にも作品73(クラリネットとピアノ)、作品88(ピアノ三重奏)、作品111(ピアノ独奏)がある。
曲の構成
[編集]発想標語はもともとドイツ語だが、括弧内に日本語・イタリア語の訳を付記する。
第1曲 夕べに(Des Abends) 変ニ長調
- Sehr innig zu spielen (非常に心を込めて弾く; Con molto sentimento)
- 3連符の伴奏の上に、もう1つ大きな単位の、アクセントの違う3連符の旋律が歌われる。つまり2拍子でありながら伴奏は2拍子、旋律は3拍子を感じさせ、それが複雑に絡み合うことで、独特の幻想味を醸し出している。
- Sehr rasch(極めて速く; Molto vivo)
- 曲集の中では、最も有名なものである。ABACAのロンド形式。力強い冒頭が印象的な主部では、内声部で情熱的な旋律が歌われる。Bでは変ニ長調に転じ、軽やかに高音部で歌われる。Cでは変ロ長調になり、幾分落ち着いたものとなる。
第3曲 なぜに(Warum?) 変ニ長調
- Langsam und zart(ゆっくりそして優しく; Lento e teneramente)
- 標題の通り、問いかけるような主題が2声で進行する。
第4曲 気まぐれ(Grillen)
- Mit Humor(ユーモアをもって; Con umore)
- スケルツォの形をとる。変ニ長調であるが、変ロ短調(しかも属和音)で開始され、すぐに変ト長調となり、変イ長調を経て、16小節目でやっと変ニ長調が示されるなど、主部だけで十分に気まぐれ的な要素を含んでいる。中間部は変ト長調のコラールとなるが、やはり気まぐれなものである。ドイツ語タイトルは「グリルでの焼肉」つまり「バーベキュー」の意である。
第5曲 夜に(In der Nacht) ヘ短調
- Mit Leidenschaft(情熱をもって; Appassionato)
- 波打つようなアルペッジョの伴奏に、断片的な旋律が顔を見せる。シューマンはこの曲集の中では最も気に入っており、クララにも最も演奏会に適した曲として薦めている。また、シューマンは自ら演奏する時には、ヘーローとレアンドロスの物語をイメージしているとクララ宛の書簡に記している[2]
第6曲 寓話(Fabel) ハ長調
第7曲 夢のもつれ(Traumes Wirren) ヘ長調
- Äußerst lebhaft(極めて速く; Vivacissimo)
- 音はきわめて速く、軽やかに鍵盤上を駆け巡る。それは一時の夢を見ているようである。その弾きにくさからしばしば「指のもつれ」と揶揄される。中間部は変ニ長調のコラールとなり、下属調の変ト長調で主題再現、半音下のヘ長調に戻る。
第8曲 歌の終わり(Ende vom Lied) ヘ長調
- Mit gutem Humor (適度なユーモアをもって; Con buon umore)
- 『クライスレリアーナ』でも見られるように、シューマンは曲集の最後でたびたびユーモアを用いた。オクターブが折り重なって音楽ができあがっていく様を、シューマン自身は「結婚式と葬式の鐘が入り混じって聞こえてくる」と表現した。コーダは瞑想的なコラールとなり、静かに鐘の余韻が響いて終わる。
脚注
[編集]- ^ “Schumann - Fantasiestücke, op.12”. Pianopedia. Eric Brisson (2001–2007). 2007年7月9日閲覧。
- ^ 藤本一子「作品篇」『シューマン (作曲家・人と作品シリーズ)』音楽之友社、東京都新宿区、2008年2月6日、p. 159頁。ISBN 978-4276221796。
外部リンク
[編集]- 'Fabel' and 'Traumeswirren' from "Fantasiestucke, Op.12" by Internet Archive (Open Source Movies) 「寓話」と「夢のもつれ」を試聴できる。
- 幻想小曲集の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト